フリーランステクニカルトレーナーとして生きていく

皆さんこんにちは。国井です。
2021年になりました。今年の目標を立てて「今年も一年頑張るぞ」という感じで心を新たにしている方もいらっしゃるのではないかと思います。一方、私は20年以上テクニカルトレーナーとして仕事をしてきて自分自身はここまで食うに困らない生活を送ることができたものの、テクニカルトレーナーという括りで見ると人材不足がまったく解消されないことを年々強く憂うようになりました。そして自分があと何年トレーナーとしての仕事ができるのだろうかと考えた時に、他のトレーナーのために自分ができることを考えるべき時期に来ているように思いました。

ということで今日はテクニカルトレーナーってどんな仕事?、そしてその仕事をフリーランスで働くってどういうことなのか?について紹介し、テクニカルトレーナーになってみたいと思う人が増えたら嬉しいなとスタンスでポエムを書いてみたいと思います。

良い人いない?が口癖

お客さんとお話ししていて「すみません、国井はそこのスケジュールいっぱいなんです」こんな会話をすると決まって「ほかに誰か良い人いませんか?」と聞かれます。
テクニカルトレーナーの仕事は完全な労働集約型のビジネスです。
だから言葉は悪いけど頭数が必要になることが大前提なのです。
しかも20年前はベンダー系トレーニングではMicrosoft、Cisco、Oracle(他のベンダーの人、ごめんなさい!)ぐらいだったのに、今はAWS、Google、Salesforceなどのクラウド系も入ってきたりと、コンテンツは爆発的に増えているので人材不足になるのは明白なのです。

テクニカルトレーニングのあり方を変えるべきじゃないのか?

集合研修で決まった時間にスタートして様々なコンテンツを学ぶ…
数十年前から変わらないこのやり方はいまの時代どうなのか?
頭数が足りないというのであれば、そのやり方を変えればよいのではないか?
という意見もあるでしょう。実際、AIが使えるレベルになったおかげで世の中には様々なマッチングサービスがあふれ、色々な業界での課題解決をしていますが、トレーニングの場合、受講に来てくださった方がわからないことがわからないので、そのマッチングをAIで自動化することはとても難しいと思うのです。(※e-Learningへの代替も昨今のコロナ禍で増えたと思いますが、すぐに情報やUIが変わってしまうクラウド時代にはビジネスとして成り立たせるのはなかなか難しいのです)

また、OJTで対応したり、勉強会を使えばトレーニングなんか要らないのでは?という意見もあるでしょう。そう思われるかたはそうしていただければよいと思いますが、私が思うにトレーナーの仕事はIT業界に対してレバレッジを効かせるために存在すると考えています。
ITエンジニアは誰だって最初は初心者です。初心者の状態から知識を蓄え、スキルを上げていこうと思ったら、トレーニングを受講していただくことが最短・最速の学習方法だと信じています。ネットで調べる、自力で頑張るみたいなやり方をされる方もいらっしゃいますが、トレーニングでポイントを掴んでGO!って人と比べると成長スピードは相対的に遅くなります(一部の天才を除く)。
なので、私たちトレーナーはエンジニアさんの成長スピードを速めるために存在すると思っています。それがひいては日本経済の成長スピードを速めるというところにつながっていくと思ってこの仕事を受け持っています。

ということでテクニカルトレーナーの存在意義がわかっていただけたところで、こんな仕事ですって話をしようと思ったら、すでに大手研修会社トレノケートさんのブログでトレーナーになるための準備について書かれた記事があったので、これを読めばいいんじゃないか?ということにここまで書いて気が付きました。

フリーランスとしてトレーナーの仕事をする

テクニカルトレーナーには研修会社に社員として所属して活躍される方とフリーランスの方がいます。私の場合、研修会社に所属していた期間は3年ほどでフリーランスとしてのビジネス経験がほとんどでした。ですので、フリーランスとしての仕事にフォーカスして話をしたいと思います。

ここに書いたのは研修サービス業のサプライチェーンをざっくりと書いたものです(雑すぎていろんなところから怒られそう)。
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フリーランスでテクニカルトレーナーの仕事をする場合、ここに書いたサプライチェーンを全部頑張る!というパターンと、大手研修会社の「研修開催」の部分だけをお手伝いさせていただくパターンの2つに分類されます。

全部頑張るパターンの最大の魅力は売上がすべて自分のところに入る点ですが、
集客を自分で頑張るってなかなか難しいんですよ。
(ちなみに私が2012年から始めたADFSトレーニングの場合、最初の3年間は1回の開催で複数のお客さんが申し込んでくれたことは一度もありませんでした)

ですのでフリーランスとしてのテクニカルトレーナーの仕事をされている方の多くは大手研修会社で集客をしてもらったり、教室などのファシリティを提供してもらい、受託で特定のトレーニングコースを受け持つ、後者のパターンがフリーランスとしてお仕事している方の大半になります。

フリーランストレーナーが多い理由

ITの仕事の中でもトレーナーの仕事は比較的フリーランスでお仕事される方が多い特徴があります。メリット・デメリットを挙げるとこんな感じかな。

メリット デメリット
・少ない資本で始められる
(スキルがある人なら手元にPCと、会場に行くまでの交通費さえあれば始められる)
・案件の規模が小さいので、仕事をする日を柔軟に設定しやすく、副業でもトライできる
・開始・終了時間が明確なので、子育てしながらでも仕事をしやすい
・年収の保証がない
(個人事業主だから当たり前ですね)
・スキルの獲得は自分で頑張るしかない
(個人事業主だから当たり前ですね)
・スキルがないと依頼が来ない
(個人事業主だから当たり前ですね)

研修自体を提供する会社さんとしても特定のトレーニングコースだけフリーランスの人にお願いできれば一時的な需要増にも対応できる、そして部分的な依頼がしやすい仕事であることも特徴のようです。

それから年収のことも気になるだろうから書いておきましょうか。
このグラフは経済産業省が平成29年に公表した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」から持ってきたものですが、

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テクニカルTトレーナーの仕事は他の職種と比べて若干高いかなという印象です。
ただ、エンジニア向けトレーナーとWord/Excel等のトレーナーでは年収は大きく異なるので、ここにある数字はその平均値なのでしょう。実際、私はフリーランスとしてきちんと生計を立てている人を何人も見ていますが、その人たちの平均はここに書かれた平均をはるかに超えている人ばかりです。
(税務署に消費税を納めている方々といえばわかりやすいでしょうか)
年収の面だけ見ると魅力的に映るかもしれませんが、やはりフリーランスで働くというのは相当に勇気のいる決断なので、簡単なことは言えないし、誰でもウェルカムですなんて言えないです。
それでもリスクをヘッジしながらやってみたいということであれば、例えば副業でスタートしてみる、既にフリーランスの方であれば他の仕事と掛け持ちするなどのやり方はあるのではないかと思います。

フリーランステクニカルトレーナーに必要なスキル

先ほども登場した「IT関連産業の給与等に関する実態調査結果」ではIT人材の給与決定に重視されている要素には以下のものを挙げています。

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ここに書かれているスキルはいずれもテクニカルトレーナーにもそのまま当てはまる要素だと思います。ここに付け加えるとするなら、やはりプレゼンテーション能力かな。

その他、ベンダーさんの公式トレーニングを行う場合であれば認定トレーナーの資格が必要になります。これを取得するのが結構大変だったりします。例えば、私が取得しているマイクロソフト認定トレーナーの場合だと以下のサイトに記載されているような要件が求められます。

それから、テクニカルトレーナーって自分の専門領域だけに特化してトレーニングをしているイメージがあるかもしれないですが、実は結構色々なことをやっていたりします(生きていくためには必要なことです)。下の図は5年スパンで私が最も登壇した回数の多いトレーニングコースのベスト3を表しています(一部守秘義務があるのでコース名ではなく、テクノロジーの名前で記載しています)
これを見ても食わず嫌いせずに色々なことにチャレンジしていくことが求められる仕事でもあったりします。ですので好奇心があって、ITのことが好きというのが前提条件になると思います。

2000年 ・Windows 2000 Active Directory
・Systems Management Server (現MECM)
・Windows クライアントのイメージング
2005年 ・Windows Server セキュリティ
・Symantec AntiVirus
・Exchange Server
2010年 ・Windows Server セキュリティ
・Exchange Server
・CA SiteMinder
2015年 ・Enterprise Mobility Suite (EMS)
・ADFS
・Symantec Endpoint Protection
2020年 ・Azure Active Directory
・Microsoft 365 セキュリティ
・Exchange Online

スキルについては色々お伝えしたいことがあるのだけれど、途中まで書いていたら10000文字を超えていたので、ブログではなくnoteに書いて公開しておきました。

最後に

最後までお読みいただきありがとうございました。
冒頭にもお話ししたようにテクニカルトレーナーの人材不足は顕著で、増え続けるコンテンツに対して対応できる人がいないのが現状です。
「私は正社員テクニカルトレーナーとして頑張りたい」という方はこの投稿で紹介した会社をはじめ、募集している会社さんがありますので、そうしたところにトライするのもよいでしょう。
一方、この投稿を読んでフリーランスのテクニカルトレーナーとして頑張りたいという方がいらしたら、私にできることがあれば応援させていただきたいと考えています。