IDG Japanの日本撤退に伴い、computerworld.jpも終了するそうです。
編集担当の方からは既に伺っていたのですが、オフィシャルアナウンスメントもあったのか、なかったのか、
よくわからないうちにサイトの更新、ニュースレター等がストップしています(本稿執筆時点)。
というわけで、computerworld.jpで連載させていただいていたブログも最終回を書けずじまい。
せっかく原稿を書いたし、何よりも編集部のみなさんや今まで読んでくださった方々へのお礼とご挨拶を
させていただきたいという気持ちがあるので、こちらに転載しておきます。
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みなさん、こんにちは。今回は、前回お伝えした、Microsoft Management Summit2013に参加する際、経由地として通りかかったComputer History Museumを紹介します。
Computer History Museumは米国サンフランシスコ郊外にある、様々なコンピューターの歴史を紹介するミュージアムでIBM System 360やAppleⅠなどのコンピューターはもちろん、モバイルデバイスやゲーム機など、すべて実物を展示して紹介しているのが特徴です。
最初に登場するのは、コンピューターの歴史と言えば必ず登場するENIAC。ENIACは世界で最初のコンピューターとされており、私の身長(170cm)を超える高さの真空管のかたまりが特徴です。ENIACは専用の部屋に設置して利用しなければならないぐらい、大きな装置で、ENIACを利用するためには、普段の仕事部屋とは別の部屋で作業をしなければならなかったのです。以降、コンピューターの歴史はコンピューターとそれを操作する人間との距離を縮める戦いであり、距離を縮めるコンピューターが登場しては、距離が遠いコンピューターは淘汰される、の連続でした。それは、肌身離さず扱えるスマートフォンが登場して、デスクに向かって使わなければならないデスクトップPCが衰退するようなイメージです。
こちらはモバイルデバイスの数々。SharpのザウルスやPalm、iPaqなどが並んでいます。いずれのデバイスも、PDAと呼ばれ、もてはやされましたが、残念ながら現在では、その後継機種を(ほとんど)見ることはできません。しかし、モバイルデバイスそのものは世の中から消えたわけではなく、むしろ「スマートフォン」として広く浸透することになりました。PDAと呼ばれていた頃のモバイルデバイスは仕事で使うことをメインに考えられていましたが、現在のスマートフォンは個人で使用するモバイルデバイスを仕事「でも」使おう、というニーズに変化しています。
インターネットを始めるためのソフトウェアが詰まった「Internet In A Box」。今ではOS標準でインターネットに接続するための機能が提供されていましたが、昔はTCP/IPですら、専用のソフトウェアを入れなければならなかったのです。そして、何よりも「Internet In A Box」という名前に驚きます。「すべてがひとつの箱に入っている(= In A Box)」という表現はソフトウェア的発想であり、インターネットに接続すること自体が目的だった時代の考え方を象徴しているように思います。今はインターネットにどうやって接続するかというところにニーズがあるわけではありませんね。
このように時代が変化すれば、その時代に求められるものも変化します。そして、時代のニーズから外れてしまったものは淘汰される運命にあります。
私の連載は今回で最終回を迎えますが、本格的な最終回を迎えるのは今回が初めてではありません。雑誌として提供されていたWindows Server World誌の時代にも紙の媒体としての最終回を迎えることがありました。Windows Server Worldの最終回を迎えてから、IT Pro向けの新しい雑誌が出てくることはありませんし、書籍も減少傾向にあるため、紙媒体での知識習得手段は時代のニーズから外れてきているように思います。
では、今回の最終回はどのような最終回なのでしょうか?
単純にひとつのメディアが無くなるだけの最終回なのか?
それとも、個人ブログやQAサイト等のソーシャルメディアの台頭によって、広告モデルに依存したやり方は時代のニーズから外れてしまっているのか?
どちらが正解なのかは現時点では私にはわかりません。
ただ私の意見としては、出版社を通じて提供されるメディアがなくなり、Amazon Kindleに代表されるようなダイレクト・パブリッシングが台頭しても、玉石混交の状態の中で知識習得を行うことは非効率的です。そのため、出版社にはひとつでも多くの「玉」となる出版物を提供できるよう努力していただき、利用者に効率的な知識習得ができるよう、今後もフィルターとしての役割を果たしてほしい、このように思うのです。(出版社を通さないで提供される出版物が「玉」か?「石」か?はレビューを見ればよいと言うかもしれませんが、それでも出版物が「石」だったら、最初のレビュアーは犠牲者にさせられてしまう!)
有料のメディア・広告付きのメディアだから「玉」、ブログ等の無料のメディアだから「石」などと、一方的な言い方をするつもりはもちろんありませんが、少なくとも私が関わってきた出版社の皆さんは、著作物に対する一定のフィルターの役割を果たしてくださったと信じていますし、その意味で「玉」の可能性が高い出版物を出してくださったと思っています。
私がCOMPUTERWORLDで提供させていただいた連載が「玉」だったか、「石」だったかは読者のみなさんに判断を任せますが、少なくとも「玉」となるように努力してくださった編集部の皆さんにはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
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computerworld.jp終了のために、連載を途中で放り出す結果になってしまったことは本当に残念でなりません。また、過去の連載や特集記事などでも多くのページビューをいただいていたものもあったので、なんとか別の形でご覧いただけるようにします。また、一部転載可能な原稿などもあるので、しばらくはこちらのブログで発表していきたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。