The Expert Conference 2010に行ってきました

 
4月25日から開催されていた、The Expert Conference 2010(TEC2010)に
参加するためにLos Angelesに行ってきました。
今日はその紹介です。
 
このカンファレンスは、ディレクトリサービスに特化したカンファレンスであるため、
TechEdに比べて深堀りした内容が聞くことができる、という特徴があります。
私は昨年はじめて参加したのですが、とても有効な時間を過ごすことができたので、今年も参加してきました。
あと、私が参加しようと思った、もうひとつのモチベーションは
「Los AngelesのL.A. Liveという場所にあるホテルで開催されている!」ということです。
L.A. LiveはLos Angelesのダウンタウンの一等地で、夜遊びには最高のロケーション夜景がきれいなのです。
(と、いいながら、私の携帯電話では夜景の写真がきれいに撮れなかったので、昼間の写真でも)
 
 
ホテル内の会場に入ると、「いよいよ始まるんだな!」という高揚感を
持たせてくれるバナーであふれています。
 
 
 
 
参加者は昨年に比べると多い気がします。
昨年は金融危機の影響があったから少なかったのでしょうが、
参加者の数だけを見ていると、金融危機の最悪期は脱した印象があります。
(などと書いている最中に、2番底が訪れているような気がしますが..)
 
また、TechEdなどのマイクロソフトのカンファレンスでおなじみの
Hands on Labはありません。Hands on Lab大好き人間の私としてはちょっぴり悲しいです。
後でも紹介しますが、
参加者の多くはマシンをいじって概要を把握したいというよりは、
ディスカッションを通じて、設計や運用面でのベストプラクティスを見つけて帰りたい、
と思っている人が多いようです。
 
では、いくつかのセッションについて紹介しておきたいと思います。
 
■Keynote
TechEdに比べて小規模なのは当り前なのですが、小規模なりにも工夫した演出があり
私たちを楽しませてくれました。
 
 
具体的な内容は、MS社員の方が出てきて話をしていましたが、
その多くはFIM2010とAD FS2.0でした。
やはり今年のテーマはFIM2010とAD FS2.0なんでしょね。
 
面白かったのは、KeynoteなのにQ&Aがある点です。
TechEdのKeynoteといえば「大まかなビジョンを提示する場」であり、「詳細は各セッションでどうそ」
という感じですが、TEC2010のKeynoteではQ&Aでいきなり濃い質問が出てきます。
しかも、スピーカーがMS社員なので、
「○○の機能はレスポンスが悪いので改善してください」とか、
「○○は2010年中にラウンチするとコミットしてください」とか、
全然質問じゃないだろ!と、つっこみたくなるよう内容にあふれていました。
MS社員の方の苦悩を少しだけ見たような気がします。
 
■テクニカルセッション「Automated FIM Deployment」
PowerShellを使ってFIMのオペレーションや展開を簡略化しよう、というセッションです。
このブログでも書かせていただきましたが、MIIS_* で始まるWMIクラスを
Get-WmiObjectコマンドレットとともに利用して、Synchronization Service関連の操作を
自動化する方法を紹介していました。
また、FIM Serverの展開に関しては*-FIMConfigというコマンドレットを使って
ポータルサイトで設定した内容を移行する方法などが紹介していました。
ただし、*-FIMConfigは一筋縄でいかないところがあり、運用上のポイントをいくつか紹介していました。
 
■ テクニカルセッション「Logging and Auditing in FIM2010」
FIM2010の監査証跡をどうやって残すか、ということは大きな課題です。
私自身、どうやって監査証跡を残す方法を紹介するのかな、と思って期待していたセッションです。
セッションの中では、SQL ServerをFIM2010に接続し、Outbound Synchronization→Exportで
FIMデータベースの中にある情報を吐き出して監査証跡として使うという方法でした。
私が見たセッションの中では数少ない、デモがあったセッションなのでした。
ところが、SQL Serverデータベースを作るところから始めていたので、
40分くらいデモをやっていて、話が追い切れなくなり、時差ボケも相まって…
また、もうひとつの方法として、QuestのGilさんが作成したPowerShellコマンドレットが
紹介されていました。こちらは近日公開予定だそうです。
 
■テクニカルセッション「AD FS2.0 Troubleshooting」
ADFSを実装するときって、設定箇所が多いので、やっとの思いで設定を終わらせ、
いざ動かそうとしても、設定ミスなどにより動かないときがあります。
そのときにチェックすべきポイントを紹介していました。
答えは「イベントビューアのログを見る」という想像通りのものだったのですが、
イベントログのどこを見ればよいか、ということにまで言及していた点が印象に残りました。
どこかの機会で、このことについては紹介できればと思っています。
また、面白かったのは、トラブルシューティングのデモで
「トラブルが起きない」というトラブルが起きていて、
そのためのトラブルシューティングを一所懸命やっていた点です。
 
■テクニカルセッション「Claims, Clouds and Cards」
ADFSを理解する上で、クレームの概念やCardSpaceの概念を知っておくことは重要なことです。
しかし、ADFSを理解するときには覚えなければならない用語が多く、
クレームってなんだったっけ?などとなりがちです。
トレーニングという仕事を生業としている私には、
スピーカーがどのような例えで説明をされるのか、とても興味がありました。
よく出てくる「パスポート」とは違う説明だったので、面白かったですね。
 
■テクニカルセッション「Locating Domain Controllers for AuthN and SYSVOL/NETLOGON Access」
認証時のパフォーマンスを向上させるために、どのようなトラフィックに注目し、
どのようなドメインコントローラーの配置を行うべきかについて
スピーカーのJorgeさんの意見も交えてベストプラクティスを紹介するセッションでした。
Jorgeさんのセッションは、理路整然とした説明、深い洞察に基づくベストプラクティスの提示、
プレゼンテーションの手法などなど、自分の本業を営む上で参考になることが多いのです。
もし機会があれば、セッションをご覧になっていただくことをおすすめします。
 
全体的なTEC2010の印象として、
きれいなデモを見るよりも、とにかく自分の答えを見つけたい、
そんな人たちであふれていたという感じです。
ですので、どのセッションに参加しても、本来のセッションそっちのけで、
ディスカッションが始まってしまうことも多く
(しかも、セッション内容よりディスカッションの内容のほうが重要だったりする)
スライドもない状態で話を聞かなければならないのは非常につらかったです。
 
AD FS2.0については、基礎技術やCardSpaceのような周辺技術について
これから理解しようという感じの人が多かったですが、
FIM2010については、What’s Newのような内容を語る時期はもう過ぎたという印象です。
どのようなデザインで実装するかだとか、具体的な利用シナリオだったり、
かなり詳細にまで突っ込んでディスカッションされていたので、
日本でもこうした議論がもっと出てくることを期待するばかりです。